KARTHとは

1.会の発足の経緯

 現在、各地で大地震発生が危惧されている中での急務の課題の一つに、『建築基準法施行前に建てられた膨大な既存伝統木造住宅(木造伝統構法で建てられた住宅)を、地域固有の文化と暮らしに調和させながら安全性を向上するための社会的整備』があげられます。 伝統木造住宅は、21世紀の地球環境保全のための永続可能な循環型社会に求められる特性を内包していると考えます。しかし、既存伝統木造住宅の安全性、特に防火・耐震性能評価手法は未だ体系的に確立されておらず、法規制の制約もあり、老朽化した伝統木造住宅を、伝統文化を活かしながら安全で良質な都市文化ストックに再生する事も容易ではない状況にあります。 伝統木造住宅の多くが消滅した阪神・淡路大震災での反省、伝統構法の衰退の危機、伝統構法を熟知した熟練伝統技能者の高齢化、近い将来予測されている大地震発生の狭間の中で、我々、建築専門家は何をなすべきか?その答えを見つけるために、関西木造住文化研究会は、1998年11月に発足しました。 その後、2014年6月23日に「特定非営利活動法人 関西木造住文化研究会」に移行しました。

特定非営利活動法人 関西木造住文化研究会 定款

2.活動目的

 「地域固有の木造伝統住文化と暮らし、そして安全性が両立した住まい・まちづくりの実現」をテーマに、「木造伝統構法について、今後の都市へ再生する意義、再生の可能性、具体的な再生・継承・発展手法等を、地域社会との関わりを重視しながら、各種の実験や調査を通して、総合的・工学的・体系的に研究・検証・提案・実践する。かつ、研究成果を各地の木造伝統文化を活かしたまちづくりに活かす」ことを活動目的としています。

特徴

  1. 防火実験・耐震実験等の各種実験等を通した工学的・体系的な研究・検証
  2. 建物単体レベルだけでなく、街区・地域防災レベルも含めた、都市・文化・地域社会等との関わりの中での総合的な研究
  3. 文化財を含む幅広い分野で活動している伝統構法の熟練技能者の大工棟梁・職方の方々と、構造・防火・防災等の様々な分野の研究者、建築実務者、一般市民の方々等の参画による総合的知見を活かした協働研究
  4. 公開方式の研究活動、研究成果の市民・建築実務者への随時公開と市民・建築実務者の声の研究へのフィードバック
  5. 全国各地の地域固有の木造伝統住文化の都市への再生のプロトタイプとして、洗練された木造伝統住文化が現在も都市の中に息づき、都市の重要なアイデンティテイを形成している関西の歴史都市・京都をモデルとした研究成果を全国へ応用する取り組み
  6. 伝統木造住宅の平常時の耐震・防火性向上対策と地震発生後の非常時の対処の仕方の両者の視点を取り入れた研究

3.主な活動概要

 会の発足以降、京都の京町家をモデルに、地域固有の木造伝統文化を活かした防火・耐震性能向上手法の研究開発と研究成果の普及啓発活動に継続的に取り組んでいます。研究スタイルは、伝統構法を支えてきた熟練技能者の大工棟梁・左官技能者・銘木問屋、各地の構造・防火・防災・建築経済・建築史等の研究者、建築実務者、市民、学生等、さまざまな分野の多くの人々の指導・協力を受けながら協働研究する方式で進めています。 また、2004年新潟県中越地震をきっかけに立ち上げた、地震被災地の建築的課題に関する情報支援ネットワーク「KARTH地震ネット」を通して、平常時の防火・耐震対策だけでなく、非常時の被災住宅の修復技術情報の普及活動に取り組んでい ます。

主な活動

  1. 地域固有の木造伝統文化を活かした、既存伝統木造住宅の防火・耐震性能向上手法の研究開発(平成11年~、協働研究)
  2. 研究成果の市民への情報発信
  3. 研究成果の建築実務者等への情報発信
  4. 地震被災時の被災住宅修復技術情報支援(2004.11/24~)
  5. 木造伝統住文化再生の学び舎の公開 西陣ヒコバエノ家(防火・耐震改修モデル町家)
  6. 研究成果を活かした各種相談(西陣ヒコバエノ家に常設)
今までの主な活動概要は下記をご覧下さい。